猪名川町域の電気敷設
電気の恩恵を当然とする現在の私たちですが、猪名川町域に電灯が初めて灯されたのは大正初期のことでした。 『電気事業要覧(逓信省電気局編)』によれば、中谷村は大正4(1915)年に既給電区域となっています。
広根では大正5年11月から翌年2月に第1期工事が行われ、50戸に初めて電灯が敷設されました。それまでのランプ生活は火屋磨きなどが必要で手間のかかるものでした。スイッチを入れるだけで明るくなる電灯は、人々に感動を与えたことでしょう。しかし、当時はまだ「10燭1灯、平均点灯時間2.5時間」程度で、生活が変わる程ではなかったようです。電力は猪名川水力電気株式会社の、現在は一庫ダム湖底にある大路次川と田尻川の出合いにあった水力発電所などから供給されていました。 なお、六瀬村では大正8年1月に羽束川電気株式会社の小柿水力発電所から給電が開始されました。昭和39年、杉生山仁地区で町内最後の電気敷設が行われました。
上水道の整備
水と緑に恵まれた猪名川町ですが、必ずしもすべての地区に十分な生活用水があったわけではなく、昭和40年代当時、町内1500世帯のうち1地区25世帯では簡易水道を持っていましたが、大部分では井戸水を、一部では湧水を飲料水としていました。そして、山林の荒廃や開発など環境の変化による水資源の減少、水質の悪化、水需要の増加予想などにより、上水道の設置が望まれるようになり、昭和46(1971)年8月に猪名川町都市計画審議会が「実施が望ましい」と答申。同年9月に町がまとめた「水利用の実態調査」(全世帯対象)でも64.9パーセントが上水道設置を希望し、同47年水道事業が開始されました。 水源は一庫ダムと決定、6月から北田原・万善間の配水管敷設を開始し、オイルショックやダムの建設の遅れによる町の自己水源の確保など幾多の困難を乗り越え、平成4年の柏原地区で敷設は完了しました。